親族宅の遺品整理をしている際に発見した書籍のうちの、戦前の最新コンサイス英和辞典、戦時下の増補英和中辞典、明解国語辞典ですが、これがなかなか、歴史を雄弁に語っています。

昭和16年4月発行の最新コンサイス英和辞典。
第二次世界大戦に日本が本格的に突入する年ですが、時局関係により擬革になった旨の説明が。
もともとは本革だったんですねえ。
そして、

敗色濃厚になった昭和19年の増補英和中辞典。
出版會承認やら、査定番号やらなかなか物騒です。
配給元として、日本出版配給株式會社という出版界の大政翼賛会兼検閲機関の片棒担ぎが明記されてます。
ちなみに、

明解国語辞典も同じようです。敵性言語の辞書だけでなく、日本語の辞典も言論統制下にあったようです。
こういう時代を経て、日本国憲法には
〔集会、結社及び表現の自由と通信秘密の保護〕
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
と、「出版」が明示され、
出版に関しては、
〔対審及び判決の公開〕
第八十二条 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。
と、これまた「出版」について、対審の絶対的公開が特出しで明記されています。
「出版」の延長線上にある、インターネット上の表現について規制を安直に是とする流れがありますが、十分な警戒が必要である、というのが、歴史的な、憲法学的な結論になりそうです、まあ、異論はあるでしょうが。
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